遺言信託のメリットと注意点

遺言信託とは?

遺言信託のメリットと注意点

 

生前に「遺言信託」を利用すると、遺言書の作成から執行までさまざまな面でメリットを受けられます。

 

遺産相続をスムーズに済ませるためにも役立つ方法ですが、詳しいサービス内容や仕組みを知らない方も多いと思います。

 

遺言信託とは?

 

「遺言信託」とは、遺言の作成や執行をサポートするために、主に信託銀行などの金融機関や一部の士業者法人等が展開しているサービスです。

 

遺言信託サービスを利用すると、遺言の内容に従った執行を任せられます。
自分が亡くなった後の相続手続きが不安な方にとって、精神的な安心感が得られるサービスともいえるでしょう。

 

遺言信託のメリット

 

 

1 遺言書作成の負担軽減

 

遺言信託を利用した場合一般的には「公正証書遺言」を作成します。

 

公証役場で公証人が遺言内容を適切に反映します。

 

公証人がチェックするため、基本的に形式不備で遺言書が無効になる恐れがないことがメリットです。

 

遺言書の作成には、保有財産の整理や分割方法の検討といった準備も必要となります。
遺言信託でサポートを受けると、環境に応じて準備段階から手続きまでその都度アドバイスを受けられるのが大きなメリットといえるでしょう。

 

2 安心感が得られる

 

遺言信託では、通常、金融機関を遺言執行者に指定します。

 

遺言執行者は、いくつかの例外を除き幅広い選択肢から指定が可能です。

 

公認会計士・税理士や司法書士・行政書士といった専門家を指定するケースも多く見られます。

 

遺言執行者が個人の場合、相続が発生した時点で遺言執行者がすでに死亡していて円滑な執行が困難になるケースもあるので注意が必要です。

 

法人である金融機関を指定すれば、執行者がいなくなることは考えにくいため、個人を指定していた場合に起こり得るリスクを軽減できるでしょう。

 

3 お手軽にアドバイスがもらえる

 

専門的な観点からアドバイスを求められる点は、サービスを利用する大きなメリットです。具体的には、以下のような相談内容が挙げられます。

 

・保有財産の内容を整理したい
・遺産分割の方法
・推定相続人の確定
・未成年者の相続人の財産管理に関する相談
・保有財産の運用方法

 

資産を有効活用するための対策も相談できるため、「将来的に資産拡大を目指したい」と考える方にとっても、有益なサービスといえるでしょう。

 

4 遺言書の変更手続きのサポートが可能

 

必ずしも遺言信託サービスの利用開始直後に相続が発生するわけではありません。

 

遺言書の作成から亡くなるまでの間に内容を変更する必要性が生じることもあるでしょう。
遺言信託は変更の依頼も可能です。

 

金融機関の多くは、以下の内容を定期的に確認します。

 

・保有資産の変化
・相続人の増減(出産や死亡など)
・遺言者が希望する相続内容の変更

 

遺言書を変更するには所定の手続きが必要ですが、手続きに手間がかかる、不備があれば無効になるので注意が必要です。

 

しかし、遺言信託であればサポートを受けられるので安心です。

 

相続が発生する直前まで、遺言者の希望を反映した手厚いサポートが受けられるでしょう。

 

※遺言代用信託と間違えないこと!

金融機関が預金者の死亡を確認すると、通常、所定の手続きを終えるまでの一定期間、口座から預貯金を引き出せません。遺言代用信託はこのことを解消できる特徴があります。概要は以下の通りです。

 

・生前:金銭を信託し金融機関が運用
・相続発生時:指定していた人物(推定相続人)が金銭を受け取る

 

例えば「亡くなった後に配偶者の口座へ300万円を振り込む」といった指定ができます。遺言代用信託を利用することで、スムーズな財産(金銭)の引き継ぎが可能です。また、負担に感じやすい葬儀費用をまかなうためにも、メリットを感じられる仕組みといえるでしょう。

 

遺言信託をする際の3つの注意点!

 

魅力的な要素が多い遺言信託ですが、検討する際は注意点の把握も大切です。

 

コスト面やサービス内容に制限があるなどのデメリットもあるため、規定を理解した上で要否を判断しましょう。

 

あらかじめ押さえておきたいポイントを3つ解説します。

 

1 遺言信託の利用の費用

 

遺言信託は、信託銀行などの金融機関と契約して遺言書の作成や保管業務を依頼するサービスです。
相続発生まで複数の作業を一任するため、継続的に費用が発生します。コストの基本的な内訳を把握しておきましょう。

 

・契約時の手数料
・遺言書の保管料
・遺言書の内容を変更する際の変更手数料
・中途解約時の清算費
・遺言執行時の執行報酬(財産総額により変動)
・弁護士や税理士への報酬(依頼したとき)

 

上記のうち、コストの大部分を占めるのが「執行報酬」です。財産の総額が高いほど執行報酬は上がり、コストも増す傾向にあります。

 

2 財産以外のものには対応できない!

 

遺言信託において金融機関が請け負えるのは、財産関係の遺言執行のみです。以下の例のように、相続人の身分に関係する内容には対応できないと認識しておきましょう。

 

・ 非嫡出子の認知手続きを任せたい
・ 未成年者後見人を指定したい
・ 相続人の廃除について、申立書を提出したい

 

業務内容の範囲は法律で定められており、何でも対応しているわけではないので注意しましょう。

 

3 相続トラブルには介入できない!

 

相続に関してトラブルが発生した場合、金融機関は問題に介入できません。

 

相続関係のトラブル解決は弁護士が請け負う業務であり、対応範囲外に定められているためです。(※日本弁護士連合会・信託協会間の規定)以下の状況が認められた場合、金融機関は遺言執行者を辞退することがあります。

 

・相続トラブルに発展するリスクが高い
・相続発生後、相続人の間で問題が発生した
・法律的な紛争が生じている

 

遺言信託を活用することで、遺言書作成や一連の手続きの負担を減らしつつ、スムーズな相続を実現できるでしょう。

 

魅力的なサービスですが、費用面や業務の制限に関するデメリットへの理解も重要です。

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